AIで作ったゲームの著作権と規約チェックリスト【2026年版】

AIで作ったゲームを公開したり売ったりするとき、多くの人がつまずくのは著作権と規約の確認です。画像やBGMをAIで作った場合に他人の権利を侵害しないか。自分のゲームは著作物として守られるのか。使ったツールや販売先のルールに違反していないか。確認すべき点は意外と多くあります。
この記事では文化庁が公表した「AIと著作権に関する考え方について」とチェックリスト資料に沿って、類似性と依拠性、創作的寄与という3つの考え方を整理します。2026年9月30日に東京地裁が示した声のパブリシティ権の判断、生成ツールの商用利用条件、Steamなど販売先ごとのAI規約も対象です。最後に公開前のチェックリストを置きました。
法律の判断は個別の事情で変わります。ここでは一次資料に書かれている考え方を紹介する形にとどめます。具体的な案件で迷ったら弁護士などの専門家に相談してください。規約や料金は2026年10月時点の内容です。
この記事の目次
AIで作ったゲームの著作権は2つの問題に分けて考える
AIと著作権の話が分かりにくくなる理由の1つは、別々の問題が混ざって語られることです。文化庁の資料も、2つを分けて考える必要があると繰り返し書いています。
1つ目は他人の権利を侵害していないか
AIで作った画像や文章や曲が、既存の作品とそっくりになることがあります。それをゲームに入れて公開すれば、元の作品の著作権を侵害するおそれが出てきます。販売する人がまず確認すべきなのはこちらです。
2つ目は自分の作ったものが著作物として守られるか
もう1つは、AIで作った素材やゲームに著作権が発生するかという問題です。著作物と認められなければ、誰かにそっくり真似されても著作権で止めることは難しくなります。
文化庁の資料は、AI生成物が著作物になる場合でも既存の作品の権利を侵害することはあると注意しています。著作物かどうかと侵害かどうかは、それぞれ別の問題です。
文化庁の「考え方」はどんな資料か
文化審議会著作権分科会の法制度小委員会が2024年3月に取りまとめたのが「AIと著作権に関する考え方について」です。2024年7月には、立場ごとの対策をまとめた「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」も公表されました。
概要版には、この考え方自体に法的な拘束力はないと明記されています。最終的な判断は裁判所が個別の事案ごとに行うものです。それでも国の審議会が現行法の解釈を示した資料なので、ゲーム制作で判断に迷ったときの基準として役立ちます。

他人の著作権を侵害するのはどんなときか
AIで作ったものを公開・販売する場面について、文化庁は通常の著作権侵害と同じ基準で判断されるとしています。ポイントは類似性と依拠性の2つです。どちらかが認められなければ、既存の作品の著作権侵害にはなりません。
類似性は創作的な表現が共通しているか
類似性とは、既存の作品と創作的な表現が共通していることを指します。画風や雰囲気が似ているだけでは足りません。キャラクターの顔立ちや構図、メロディーなど具体的な表現が共通しているかで判断されます。
依拠性は既存の作品をもとにしたか
依拠性とは、既存の作品をもとにして作ったことを指します。AIを使う場合はここが少し複雑です。文化庁の概要版は、学習データに既存の作品が含まれていた場合、利用者がその作品を知らなくても通常は依拠性が推認されるとしています。
チェックリスト資料はさらに、プロンプトに作品名やキャラクター名などの固有名詞を入れると依拠性が認められやすくなると書いています。既存の画像を読み込ませて似たものを出す使い方も、権利者の許諾が必要になる場合があるという整理です。
作風はアイデアだが狙い撃ちの学習は別
著作権法が守るのは創作的な表現で、アイデアは守りません。作風がアイデアにとどまるなら、似ていても侵害にはならないというのが文化庁の整理です。
一方で、特定のクリエイターの少数の作品だけを追加学習させて、その表現を出力させるような使い方は別の扱いになります。こうした場合は生成物に元の表現が感じ取れれば侵害になり得るとされています。LoRAなどで特定の作家の絵柄を再現した素材を売るのは避けたほうが安全です。
生成と公開・販売は別に判断される
自分で楽しむために画像を生成する行為は、私的使用の範囲なら許諾がいりません。ただしそれをゲームに入れて配信したり売ったりすると、私的使用の範囲を外れます。チェックリスト資料も、生成が適法でも利用まで適法とは限らないと注意しています。
| 場面 | 侵害になりやすさ | 理由 |
|---|---|---|
| 作品名やキャラ名を入れて生成した素材を販売 | 高い | 依拠性が推認されやすく、似た表現が出やすい |
| 既存の画像を読み込ませて似せた素材を使う | 高い | 似たものを出す目的の入力は許諾が必要な場合がある |
| 特定作家の作品だけで追加学習したモデルの出力 | 高い | 作風を超えて表現が共通しやすい |
| 一般的な指示で作り、類似作品を検索して確認した素材 | 低め | 類似性がなければ侵害にならない |
| 自分で鑑賞するためだけに生成した画像 | 低い | 私的使用の範囲なら許諾は不要 |
表は文化庁の資料の考え方をもとにした目安です。個別の判断ではありません。
AIで作った素材に著作権は発生するか
次は自分のゲームが守られるかという問題です。文化庁の概要版は、人がほとんど指示を出さずに生成ボタンを押しただけのものは著作物に当たらないとしています。人がAIを道具として使い、創作的寄与と呼べる行為をしていれば著作物になり、その人が著作者になるという整理です。
創作的寄与を判断する要素
概要版では、創作的寄与を判断する要素の例として次のものが挙げられています。
| 要素 | 文化庁の資料での扱い |
|---|---|
| 指示の分量と内容 | 創作的な表現を具体的に示す詳しい指示は寄与と評価されやすい。長くてもアイデアを示すだけなら影響しない |
| 生成の試行回数 | 回数が多いこと自体は影響しない。結果を見て指示を直しながら繰り返す場合は著作物性が認められることもある |
| 複数の生成物からの選択 | 選ぶだけでは影響しない。ただし創作の一部として選択がある行為もあり、あわせて考える |
| 人による加筆・修正 | 創作的な加筆や修正をした部分は、通常その部分に著作物性が認められる |
ゲーム制作で意識したいこと
ゲームはプログラム、シナリオ、画像、音楽などの集まりです。AIの出力をそのまま並べただけの部分は、守られにくいと考えておいたほうがよいでしょう。キャラクターの設定やシナリオを自分で書く。生成した絵に手で描き足す。こうした人の手が入った部分を残すほど、権利を主張しやすくなります。
ツール側の説明にも同じ注意が見られます。音楽生成のSunoのヘルプにも、AIが作った音楽は人が作者でないため著作権の保護を受けられない場合があるという記載があります。自分で書いた歌詞なら別に保護される可能性があるという説明です。
素材をAIで作るときの手順はゲーム素材をAIで作る方法で詳しく扱っています。

声とキャラクターの権利で押さえたい2026年の動き
著作権とは別に、人の声や顔に関する権利も無視できません。2026年は声の扱いについて大きな動きが2つありました。ゲームで合成音声を使う人は必ず目を通しておきたい内容です。
2026年9月30日の東京地裁判決
声優の津田健次郎さんが、自分の声に似せた生成AIの音声を使った動画をめぐってTikTokの運営会社を訴えた裁判です。ITmedia NEWSなどの報道によると、東京地裁は人の声も肖像と同じく人格の象徴であり、パブリシティ権の保護対象になり得ると初めて判断しました。
問題の動画は188本以上あり、投稿者は月に50万〜75万円の収益を得ていたと報じられています。ただし投稿者がアカウントを削除し、データもサーバーから消えていたため、削除の請求は棄却されました。原告側は損害賠償を求めていません。弁護士ドットコムニュースは、原告代理人が判決の社会的な意義を強調したと伝えています。
2026年8月7日の法務省の解釈指針
判決の前、法務省は有識者検討会の報告書を公表しています。声も「パブリシティ権」と「みだりに利用されない権利」の対象に含まれるという解釈を示した内容です。報道では、声優や歌手の声を無断でまねたAI音声のカバーをSNSで公開し収益を得れば侵害になり得る例が紹介されました。一方で、ものまねや声まねは基本的に侵害しないとも説明されています。
この報告書も解釈指針で、法的な拘束力はありません。それでも司法と行政が同じ方向を示した意味は大きいと受け止められています。
ゲームで声を使うときの注意
実在の声優や配信者の声に似せた合成音声をキャラクターに使うのは避けてください。「〇〇さん風の声」を売り文句にするのも危険です。文化庁の概要版も、声優の声を含む実演とAIの関係は今後の検討課題として挙げています。
合成音声を使うなら、声の提供者が利用条件を公開しているサービスを選びます。商用利用やクレジット表記の条件を確かめたうえで使うのが基本です。
生成ツールの商用利用条件の確認ポイント
著作権の考え方とは別に、使ったツールの利用規約も守る必要があります。文化庁のチェックリスト資料も、利用者は事前にサービスの規約を確認して従うことが必要だとしています。
規約で見る5つの項目
- 商用利用ができるプランか無料プランは非商用に限るサービスが少なくありません。販売や広告収入のあるゲームは商用利用に当たると考えて確認します。
- 売上規模による条件年間の売上が一定額を超えると上位プランや別契約が必要になる規約があります。
- クレジット表記の義務公開時にサービス名の表記を求める規約もあります。載せる場所はゲームのクレジット画面やストアの説明文です。
- 生成物の権利が誰にあるか利用者に権利を渡すのか、サービス側が持つのかはプランで変わることがあります。
- 禁止されている入力や用途他人の作品の入力や、実在の人物の声や顔を使うことを禁じる規約は多くあります。
主なツールの条件の例
公式のヘルプやライセンス文で確認できた例を挙げます。条件は改定されることがあるので、使う前に必ず最新の公式ページを見てください。
| ツール | 無料での利用 | 商用で使う条件 |
|---|---|---|
| Suno(音楽) | 非商用に限る。曲の所有者はSuno | Pro・Premierに加入中に作った曲は利用者が所有 |
| ElevenLabs(音声) | 商用利用は不可。公開時はタイトルに「elevenlabs.io」か「11.ai」の表記が必要 | 有料プランに商用ライセンスが含まれる |
| Stability AIのモデル(画像など) | Community Licenseで利用 | 年間売上100万ドル未満なら登録のうえ商用可。超えたら個別ライセンスが必要 |
Sunoのヘルプは、加入中に作った曲かどうかで扱いを分けています。あとから有料プランに入っても、無料のときに作った曲まで商用で使えるとは限りません。ElevenLabsも、有料プランの期間外に作った音声は商用で使えないと説明しています。
契約の記録を残しておく
どのツールのどのプランで、いつ作ったかを記録しておくと後で困りません。契約画面のスクリーンショットと、生成した日付をまとめたメモで十分です。素材ごとの記録は、販売先に説明を求められたときにも使えます。

販売先・公開先ごとのAI規約
ツールの規約を守っていても、販売先のルールに合わなければ公開できません。主な販売先と公開先のAI関連のルールを、2026年10月時点で公式情報から確認できた範囲でまとめます。
| 販売先 | AIに関する主なルール |
|---|---|
| Steam | コンテンツ調査票でAIの使用を申告する。事前生成とライブ生成の2区分。ライブ生成は違法なコンテンツを防ぐガードレールの説明が必要で、成人向けの性的コンテンツのライブ生成は受け付けていない。開発の効率化のための利用は申告の対象外 |
| itch.io | アセットの販売者は生成AIの使用の申告が必須。申告しないAIアセットは一覧に表示されない。ゲームも正確なタグ付けを求められているが、素材ほど厳しくは運用されていない |
| DLsite | 「AI生成作品」と「AI一部利用」を区別して申請し、作品説明にAIの使用範囲を書く。AI生成作品は専用フロアで販売され、月ごとの申請数に上限がある。数は公式ヘルプで確認する |
| BOOTH | 2025年7月18日から、特定の作品や作家への依拠性が高い商品や大量・連続の出品に対し、商品やショップの非公開とアカウント停止の措置をとると告知 |
| Google Play | AIでコンテンツを生成するアプリは、アプリを出ずに不快な出力を通報できる機能が必須 |
| App Store | 審査ガイドライン5.1.2(i)で、個人データを第三者のAIと共有する場合は明示したうえで明確な許可を得ることを求めている |
| unityroom | 生成AIの規定はない。利用規約第7条で、自分が権利を持つか許諾を得た素材だけを投稿できると定めている |
Steamの申告の書き方はSteamでAI生成ゲームを売る方法で手順を追って説明しています。広告収入を得られる公開先の比較は作ったゲームの公開先と広告収入を参考にしてください。
注意
LLMでキャラクターが話すゲームは、ライブ生成としての申告や通報機能の用意が求められます。プレイヤーの入力を外部のAIに送るなら、そのこともプライバシーポリシーに書いておきます。
公開前のチェックリスト
ここまでの内容を、ゲームを公開する前に確認する項目としてまとめました。文化庁のチェックリスト資料で利用者に勧められている対策も取り入れています。
素材の中身
- 作品名やキャラクター名、実在の作家名をプロンプトに入れて作った素材がないか
- 他人の画像や曲を読み込ませて似せた素材がないか
- 主要な画像を画像検索にかけ、既存の作品と似ていないか確かめたか
- BGMやセリフが有名な曲や作品のフレーズに似ていないか聞き直したか
声と人物
- 実在の声優や配信者に似せた合成音声を使っていないか
- 実在の人物の顔や名前を無断で使っていないか
ツールの規約
- 素材を作った時点のプランで商用利用が認められているか
- クレジット表記が必要なツールを、クレジット画面や説明文に載せたか
販売先の規約
- 販売先のAI申告を、使った範囲どおりに正直に書いたか
- LLMを使う場合、不適切な出力を防ぐ仕組みと通報の窓口を用意したか
記録
- 素材ごとに使ったツール、プラン、日付、プロンプトを保存したか
- 人が描き足したり書き直したりした部分の元データを残したか
プロンプトの保存は、チェックリスト資料でも勧められている対策です。依拠性がないことを説明したり、自分の創作的寄与を示したりするときの材料になります。

権利トラブルが起きたときの対応
注意していても、権利者から連絡が来ることはあり得ます。文化庁の概要版によると、侵害を受けた権利者は新たな生成や配信の差止めを請求できます。生成された侵害物の廃棄を求めることも可能です。
連絡が来たら、まず問題の素材を公開から外して事実を確認します。そのうえで保存しておいた生成の記録を見直してください。使ったツールやプロンプト、作業の日付がそろっていれば、どこまでが自分の手によるものかを説明できます。
文化庁は、AIによる著作権侵害の事例や疑いのある事例について相談窓口を案内しています。文化芸術活動に関する法律相談窓口もその1つです。販売中のゲームで深刻な問題になりそうなら、早めに弁護士に相談してください。
ポイント
トラブルのときに頼りになるのは、作った過程の記録です。素材のファイル名とプロンプトを対応させておくだけでも、確認にかかる時間が大きく変わります。
よくある質問
AIで作った画像をゲームに使って売っても違法ではありませんか
AIで作ったこと自体が違法になるわけではありません。文化庁の資料では、既存の作品との類似性と依拠性の両方が認められた場合に侵害になるとされています。作品名を入れずに作り、似た作品がないか検索で確かめ、ツールの商用利用条件を守ることが基本です。
AIで作ったゲームに著作権はありますか
簡単な指示だけで生成したものは著作物に当たらないとされています。具体的な指示を重ねたり、人が加筆や修正をしたりした部分は著作物と認められる可能性があります。プログラムやシナリオを自分で書いた部分は、通常の著作物と同じ扱いです。
「〇〇風の絵柄」で作るのは問題ですか
文化庁の整理では、作風がアイデアにとどまるなら似ていても侵害にはなりません。ただし作家名を指示に入れると依拠性が推認されやすくなります。特定の作家の作品だけで追加学習したモデルを使う場合は、侵害になり得るとされています。
無料プランで作ったBGMを後から商用で使えますか
ツールによります。Sunoは無料プランの曲を非商用に限っています。ElevenLabsの説明では、有料期間の外で作った音声は商用で使えません。後から有料プランに入っても、過去の生成物が商用可になるとは限らないので、規約を確認してください。
SteamでAIの使用を申告すると売れなくなりますか
売上への影響については複数の分析がありますが、結論は出ていません。一方で申告しないまま発覚すれば、信頼を大きく失います。使った範囲を正直に書くことが、結果的に一番リスクの小さい選択です。
まとめ
AIで作ったゲームの権利は、他人の権利を侵害しないかと、自分の作品が守られるかの2つに分けて考えると整理しやすくなります。前者は類似性と依拠性、後者は創作的寄与が判断の軸です。2026年は声の権利についても東京地裁と法務省が同じ方向を示しました。
ツールと販売先の規約は頻繁に変わります。公開の直前に公式ページを見直し、記録を残す習慣をつけておけば多くのトラブルは避けられます。稼ぎ方の全体像はAIゲームで稼ぐ方法にまとめました。
この記事のまとめ
- 侵害になるかは既存の作品との類似性と依拠性で判断される
- 作品名やキャラ名をプロンプトに入れると依拠性が認められやすい
- 生成ボタンを押しただけのものは著作物になりにくく、人の加筆部分は守られやすい
- 2026年9月30日、東京地裁が声もパブリシティ権の対象になり得ると判断した
- ツールは作った時点のプランで商用可否が決まることがある
- Steam・itch.io・DLsite・BOOTH・アプリストアのAI規約を公開前に確認する
- ツール・プラン・日付・プロンプトの記録が、説明とトラブル対応の材料になる











